風景と質量と:1.光を纏う枯れ木
僕はメディア装置の表現が好きな理由は,作家の個の消失とコンテンツなき抽象性にある.それはコンテンツ性に頼らず機能的な主体を取り戻し,鑑賞者に追体験させるメタ機能だ.それは文脈とビジュアルデザインの無間地獄が作るパズルゲームを超えたものに思えたのだ.
メディアアートの制作で,風景の一つとして過ぎ去っていく瞬間と瞬間が物質性を伴って現象に変換され,その展示自体も風景にされて行く.一連のプロセスを感じながら過去に変換することが好きだ.アナログな身体と物理現象の中でそこにあるデジタルを研ぎ澄ます.デジタルでしか見えない世界認識で,失われつつあるものを切り取り,手触りを与えるプロセスを通じ,時間と空間の解像度との対話するときのみ,自己のアナログな精神を実感する.そんな風景とメディア装置に関わる世界認識について,光学定盤のキャンパスの上に詩的なプロセスで切り取り,インスタレーションの連作で表現する.
枯れた木を見ていると質量を感じる.質量のない世界では生きも死にもしない木が,その生を終えて乾燥して,半永久的に枯れ木になる.まるで動物が光を纏っているようだ.窓辺に佇むその逆光に恋して.
Artist Profile
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Mika Ninagawa
Yoichi Ochiai
落合 陽一
メディアアーティスト。1987 年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を早期修了。博士(学際情報学)。
2015年World Technology Award、2016年Prix Ars Electronica、EUよりSTARTS Prizeを受賞。Laval Virtual Awardを2017年まで4年連続5回受賞など、国内外で受賞多数。
直近の個展として「山紫水明∽事事無碍∽計算機自然(東京表参道,2018)」、「質量への憧憬」(東京・品川、2019)」など。