MATトーク:「—10年の場所から、できた道を振り返る」
2012年3月11日から毎年始まった「しゃぼん玉を吹きながら、歩いて家に帰る」。企画者の手を離れ、現在では様々な形で街中でしゃぼん玉が吹かれるようになってきている。
震災で被った私たちの傷はそれぞれ個人の大事な記憶であり、苦しみは大きさや質で測れるようなものではない。このプロジェクトを続けていると、彼らの何気ない語りを、ぽつり、ぽつりと、聞くことがある。本人の生の声を通して聴くその語りは、本当に貴重な経験を共有していただいているのだと、毎度心が揺れ動く。このしゃぼん玉を用いたプロジェクトが、そうした場を有機的にもたらしている。時が経過したからこそ、語れる言葉、新たな視点が芽生えていることを実感している。私の知らない場所で、しゃぼん玉と共に語られた言葉もあっただろう。
2012年からこの歩みを見守っていた四方幸子氏をお迎えして、今一度軌跡を振り返り、共有する場を持ちたいと企画した。考えたくはないが、大きな災害はこれからも起こり得るだろう。私たちは、どのようにしてその傷と向き合い、未来に語り残して行けば良いのだろうか。そのための一つの社会実験としても、しゃぼん玉のプロジェクトは機能しているように思う。
【出演者】三木麻郁、四方幸子
【場所】 桑原商店(YouTube 配信)
【URL】https://youtu.be/MUstOfToUeQ
Artist Profile
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Maaya Miki
三木麻郁
1987年生まれ。東京を拠点に活動するコンセプチュアル・アーティスト。代表作にカード式オルガニートを使った「誕生の讃歌」など、現象やコードを従来とは異なるメディアを通して再表出させることで、慣れ親しんだ知覚や意味を揺るがせる。ドローイング、立体、音、ことば、写真、映像など、様々なメディアを取り入れて作品を発表する。2015年東京芸術大学大学院美術科先端芸術表現専攻を修了。
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Yukiko Shikata
四方幸子
キュレーティング/批評。多摩美術大学・東京造形大学客員教授、
IAMAS・武蔵野美術大学非常勤講師。 アートと科学を横断する展覧会やプロジェクトを1990年代以降 キヤノン・アートラボ、森美術館、NTT ICCキュレーターまたインディペンデントとして国内外で実現。 近年の仕事にSIAF2014アソシエイト・キュレーター、 2016 茨城県北芸術祭キュレーター、「Art, Media and I Tokyo(AMIT)」(2014‐2018)ディレクター。